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光がわたる大空間

住まい方に合わせて形を変える家

木の香の薫る、のびのびとした大空間

勾配のある天井が横だけでなく上にも空間の広がりを感じさせる

木のやさしさに包まれた、和を感じさせる平屋の家。メインルームはキッチンとリビング・ダイニング、小上がりの和室、さらには南側のもうひと間までもが、ひとつながりの大空間。ダイニングの一番隅の席に座ると、対角の南の隅まで驚くほどの奥行きを見通せる。3方に設けた窓はのどかな山と空を映し、室内に光を届ける。「広くて明るいリビング」とのKさんの希望が、気持ちよく叶えられた住まいだ。

住み始めて3ヶ月。「木の素材感、手づくり感がいいですね。ちゃんと建てた家、という感じがしてとても落ち着きます」と、ご夫婦は穏やかに微笑む。家づくりを始める際にはいくつものメーカーや工務店を見て検討したそうだが、「『きなり』さんの家は、細かな隅の部分まで本当に仕上げがきれいだと感じたんです。設計やデザインももちろん大事ですが、最終的に建ててくれるのは職人さんなので、職人の仕事が丁寧であることを一番に選びました」と、ご主人は話す。

フレキシブルなゆとりの間

ライフスタイルの変化に合わせて、役割を変えられる可変性のある大空間

この家のつくりで特徴的なのは、南側のセカンドリビングのような空間。これは将来的には子ども部屋となるもので、普段はオープンだが建具を閉めればリビング・和室と完全に区切ることができる。また真ん中に仕切りを作れば、2部屋にわけて使えるようにもなっている。

当初ご夫婦はこの案を見て「子ども部屋が南面を占めてしまうのはもったいないのでは」と感じ、別のプランも考えてもらったというが、結局もとの案に戻ったそう。「設計士さんは『子ども部屋として使うのはほんの一時期のこと。それ以外の時期にもしっかり活用できる空間にしましょう』と提案してくださいました。しかもプランニング当時はまだ夫婦だけの生活で、将来家族がどう増えるかもわかりませんでしたから、設計士さんの考えに納得しました」と奥さまは話す。

リビング全体は大きく緩やかな船底天井となり、悠々とした空間の広がりを感じさせる。中央の棟木から南北に向けて、繊細な竿天井のラインが細く長く伸びる。竿のラインは和室を挟んで子ども部屋まで続き、空間の連続性を強調する。いっぽう和室の天井は、ごろりと寝転んだときに目線がちらつかないよう、フラットな網代天井に。これは工事途中に職人が現場で提案してくれたものだという。

建具の開閉でリビングの延長にも、独立した部屋にもなる空間

両側面の間仕切りを自由に動かすことで、和室の用途も自在に

やわらかな意匠にもこだわった和室の建具

天然木の落ち着きあるやさしい住まい

生活感を表に見せない動線計画

明るい褐色の吊り戸棚がナチュラルなリビングに映える

キッチン前面や背面収納などはすべてタモ材で造作。流れるような木目が、室内に心地よい統一感を生む。キッチンからダイニングまで、北面の幅いっぱいに設けた吊り戸棚は使い勝手よく、デザインのアクセントにもなって奥さまのお気に入りだという。その下のカウンターデスクには、あえて無垢材ではなくタモの集成材を使用。「子どもがお絵かきや宿題をする場所なので、汚れやキズを気にせず思い切り使えるようにしました」という。

建物西側には生活に必要な機能を集約し、浴室から洗面、WIC、寝室まで各室を通り抜ける動線をつくった。洗面にはグレーのモザイクタイル、トイレには落ち着いた柄のクロスを張り、さりげなく素材遊びも楽しむ。床面積の広い平屋では建物中心部がどうしても暗くなりがちだが、建具をガラス入りのものにしたり、明かり取りの窓を設けたりして、明るさと風通しを確保し、閉塞感を抑えている。

ものを減らし、すっきり心地よく暮らす

庭の広がりを楽しむ大開口が開放感を与える

リビングが広く明るく見えるのは、Kさん家族の暮らし方によるところも大きい。部屋には極力ものを置かないよう日頃から気をつけているといい、視界に入るのは落ち着いた木と壁の色だけ。内装については「濃色の木やタイル、石などを使ったゴージャス感のあるインテリアも素敵ですが、自分たちのイメージとはちょっと違うなと。かっこよくなりすぎないよう、明るくやわらかい印象の色と素材でそろえてもらいました」とご主人は話す。

住んでみて特に魅力を感じるのは、テレビ下の地窓。和室の段差に腰掛けるとちょうど、窓外に植え込まれた植栽が見える。障子を閉めていると、朝には低い光が地窓から差し込み、植栽の影が障子に映ってとてもきれいなのだそう。まだハイハイの娘さんも、室内で飼っている愛犬も「目線の高さがちょうどいいらしくて、よく窓際で外を眺めているんですよ」と、ご夫婦は目を細める。南にも贅沢に庭をあつらえ、窓を開け放って存分に眺められるよう、道路側には目隠し塀を設置。四季のうつろいとともにある、穏やかな家族の暮らしが実現した。

取材担当 吉田

木を基調とした中にモザイクタイルが清潔感とアクセントを加える

高窓が奥行きのあるリビングにもふんだんに光を届ける

外からの視線を防ぎ、内からの眺めを楽しませる

「座」の視線を意識して設けられた地窓用の植栽