やっぱり庭のある家で暮らしたい
リビングにもダイニングにも光がたくさん入るため、照明がなくても明るく過ごせる。
表通りから中に入った、昔ながらの住宅地の一角に建つWさま邸。大きな窓から入る光が無垢の床にあたたかな陽だまりをつくり、縁側の先に素朴な庭が広がる。
「庭があって、土が見える暮らしはいいですね。家を建てて、実際に広くなったことはもちろんですけど、気持ちの面でゆったりと暮らせるようになったのが一番よかったです」と、奥さまはほほえむ。
お子さんがまだ小さなころに分譲マンションを購入し、以来10数年暮らしてきたWさま家族。前々から戸建て願望はあったものの、当時は条件に合う土地が見つからず、なんとなく諦めてマンション住まいの選択に至っていたという。しかし慌ただしい毎日の中で手狭感によるストレスがくすぶり続けており、奥さまの心に「やっぱり家を建てたい」との思いが再び湧き上がってきた。
それからは連日、家族で話し合い。簡単に決断できるものではなかったが、そこへちょうど理想といえる土地が出たことで、実現に向かって話が進み始めた。「きなりの家」はマンションを買う前から気になる存在だったとのことで、依頼先選びにはほぼ迷いはなかったそうだ。
広いバックヤードで、これまでの不便を解決
キッチンの奥には廊下を兼ねたバックヤードが続く。
プランニングの上でもっとも重視したのは家事動線。マンションでは、夫婦で協力して家事をしたくてもキッチンやサニタリーが狭く動きづらい、家族それぞれの持ち物がリビングに散らかり片付かない、といった悩みが大きかった。こうした不便を解決するため、1階にたっぷりとしたバックヤードを設け、生活感の出る部分をそこに集約。キッチン、リビングと連結させて動きやすい回遊動線を作った。
バックヤードは玄関からクローク、ウォークスルークローゼット、サニタリー、勝手口まで一直線。洗濯〜収納も身支度も、この中で完結できる。
設計士の提案で、玄関クロークには靴の収納のほかに、小物を置ける棚を造作。「カギやマスク、バッグなど細々したモノの置き場所がきちんと決まり、今までのストレスが一掃されました」と、奥さまはにこやかに話す。
キッチンは2人で立っても余裕の広さ。バックヤードとの連結部分にパントリーが配置され、リビングから見える部分はいつでもきれいな状態をキープできる。
一方で、マンションならではのワンフロアの利便性も継承。2階は最低限の個室を置くにとどめ、将来にわたってほぼ平家感覚で暮らせるようにした。
パッシブデザインの設計で、冬場は部屋の奥まで太陽の光が届く。
太陽光パネルを設置し、太陽の恩恵をフル活用したZEH住宅。
将来、1階だけで生活できるように、主寝室(予備室)もつくった。
子ども部屋は扉で仕切っており、可変性◎
全館空調で、家じゅう自然な心地よさ
本物の石を貼った壁は、部屋の奥行きと重厚感を演出している。
広く見通しのよいリビングは、床にも天井にもやさしい色合いの無垢材が用いられ、ほっとするような穏やかさ。昼間は陽の光が室内の奥深くまで入り込んで明るく、夜は間接照明があたたかなくつろぎ感を演出する。
「単に高気密高断熱というだけでなく、自然の光や風の力をいかすパッシブデザインの考え方に非常に共感しましたね」と話すのはご主人。生活を快適にするために性能面にも充分に力を入れ、ZEH住宅の認定を受けている。
家じゅうどこにいても自然な心地よさを感じるのは、全館空調システムを採用しているから。小屋裏のエアコンで温度を調節された空気が、冬は床面から、夏は天井からやわらかく各室に届けられる。冬場はヒーターを使わなくても室温が20度を下回ることがなく、真夏もリビングのエアコンを入れたのは数えるほどだったとか。居室以外も快適な温度が保たれているので、バックヤードを出入りしての家事もスムーズ。2階のフリースペースもお子さんたちのPCコーナーとして存分に活用されている。
諦めず、とことん向き合ったからこそ今がある
ご夫婦で改良中のお庭。ご主人様が池を作ってみたりと、住みながらお庭づくりを楽しんでいる。
奥さまは暇さえあれば庭に出て、草木の手入れをするのが心の癒し。マンションのバルコニーに置いていた鉢植えの木々も庭の露地に植え替え、いきいきと枝葉を伸ばせるようになった。
ご主人は庭に小さな池を掘り、夏場にはエビ釣りをして楽しんだそう。縁側で夜風にあたりながら一杯飲むのが至福の時間だ。
「ここに至るまでには、もう家を建てるのは無理だと思ったことも何度もありました」と奥さま。夫婦で意見がまとまらず話が止まることも少なくなかったというが、「担当の設計士さんが、決して急かすようなことを言わず、いくらでも待ってくださったことが、本当にありがたかったです。予算面の不安に対してはコストダウンの方法を考えてくださり、一方であれもこれも譲れないと焦る気持ちを抑え、冷静にさせてくれました。想いを叶えることができたのは、本当に担当の方のおかげです」と、しみじみと話していた。
全館空調と、陽射しで冬は暖かく。夏は庇で日陰になるように工夫。
階段下のスペースも収納として有効に活用。広々とした洗面脱衣室。
スタディスペースは趣味部屋に。ここの上には秘密の屋根裏収納がある。
バックヤードは大容量のウォークインクローゼット兼廊下で回遊性のある間取りに。