TOPブログ未分類屋根緑化のお話

「き」なりの家の屋根の一部は、20年以上前から一年中緑で覆われています。都市のビル屋上などでは、緑化は特別なものではないですが、木造建築はかなり珍しいのではないかと思います。お客様の住宅で施工する機会がほとんどない為、あまり話題に上がらない設えですが、「屋根に花が咲く」というこの珍しい技術をここで紹介したいと思います。

 

 

〇屋根緑化の意味

屋根緑化の効果を「断熱」と思われがちですが、その効果を期待して設置されているものではなく、屋根面の紫外線による劣化の軽減、屋根の照り返しによる熱射の軽減、温暖化軽減効果などを意図して実験的に採用しました。2か月間雨がなくても灌水は不要で、雪にも、強風にも耐えるのです。しかも表土が薄いため、前栽培で生えた雑草は屋根敷設後まもなく消滅する。メンテナンスフリーが売り物のテクノロジーです。

 

〇勾配屋根の緑化は意外と高度な技術

この特徴的な設えは、ドイツのS&B社のライセンス「エクセロ・フロー」を採用して、木造の5寸勾配の屋根(一部緩勾配屋根)を緑化しています。このシステムは、マットと植物の生体や種子を植え付け、平坦な畑で植物をマットに根付かせてから屋根に載せています。前栽培で植物の根はマットにしっかリと絡み、斜面のきつい木造の勾配屋根にも敷設することが可能となっています。

 

〇屋根の上の植物

このシステムの要は植物にあり、マットに絡んだ3cm程度の厚みの表土だけで、潅水せずとも成長し続けることが植物に課された生育の条件です。この過酷な条件でも20年を経たきなりの屋根に自生している植物はいくつかありますが、当初から主に植え付けているのは「セダム」です。セダムは、べんけい草科の多肉植物で、日本名ではドイツ万年草です。グランドカバーにも使用される植物で、春には花も咲きます。この多年生草のセダムが個体数を増減させながらも立派に屋根を緑で覆っています。

 

実際お客様の家で「屋根緑化」を施工することは多くありませんが、長年住宅を建築する中で数例は施工させて頂きました。アフターでお邪魔したり、通りかかったりした際、屋根の上で元気に自生している植物の姿をみるといつもの屋根とは違った趣を感じさせてくれます。

今年も、もうすぐやってくる暖かい季節には素敵な花を咲かせてくれることと楽しみにしています。

 

営業設計 田中賢二