TOPブログ未分類海外建築探検記 (トルコNo.1)
憧れのトルコ訪問

NCM_0061建築関係の仕事を始めたころから、さまざまな文化圏の建築、特に住宅に興味が湧き、海外に旅行や研修に行ったときには、できるだけ実際に現地の人が暮らしている住居を勤めて訪問できるようにしています。
そんな中で、特に訪れたかったのが「トルコ共和国」です。日本ではあまりメジャーな渡航先ではないかもしれませんが、シルクロードの中継点として古代から文化、宗教が入り乱れ、建築的にも最も興味深い国のひとつです。
親日国として知られているトルコですが、現在の社会情勢から、なかなか日本人にとって、訪れにくい場所になっています。そのトルコが親日国になるに至ったエピソードを描いた映画も公開されるこのタイミングに、日本では珍しい現地の住宅を訪れたことついて書きたいと思います。


目的の地 「カッパドキア」

imageb3トルコの重要な遺跡やモスクなど、滞在中には観光してはいたのですが、渡航中に最も楽しみにしていたのが「カッパドキア」です。そこは、凝灰岩や溶岩層が自然の侵食により、起伏に飛んだ形の奇石郡が観光地として世界的に有名であり、古代からその掘削のしやすさから、その内部に岩窟境界や住居がその岩肌をこりこむことで「建築」され、住居や教会としても利用されてきました。
そこでは建築は「建てる」ものではなく、「掘り出す」感覚なのです。最も興味を引かれたのはその点でした。

居住中の岩窟住居に訪問

imageb2カッパドキアはかなり観光地化しており、旅行者にとって便利で魅力的なところです。岩窟ホテルや、古代の協会の遺跡がいたるところにあります。そして、現在居住中の住宅も数多く点在してします。岩窟ホテルは、あまりにも内装や設備が近代的に整い過ぎており、「洞窟の隠れ家」的な趣を求めていた自分としては少し物足りなさが残りましたが、今回、実際にお住まいの岩窟住居のひとつを訪問することができました。トルコ政府の許可を得れば、空きがあれば、誰でも住むことが可能なそうです。中部を勝手に改築や掘削をやってはいけないようですが、入り口も広く、電気や暖房も完備されており、設備の整った賃貸住居になっています。さすがにトイレ、水道は室内にはなく、外部に扉を別にして設置してありました。


快適で文化的な住居

imageb1内部は岩肌をノミ状のもので掘削した後、トルコの有名な工芸品である絨毯を敷き詰めただけの空間ですが、絶妙に窓も設置されているため、明るく清潔な印象です。訪れたのは、1月の真冬のシーズンですが、暖房のおかげもあって十分快適に過ごすことができます。当然エアコンは有りませんが、夏は特に快適に過ごせる住居だそうです。確かに部屋数もあまりなく、天井の高さも2m~2.4mほどで、大きな空間は望めませんが、家族が一つの空間に寄り添うシンプルな暮らしが、古代から営々と続いていました。まさにそこは「洞窟の隠れ家」的な趣で、床、壁、天井がすべて一つの質感で構成された空間は、まさに「落ち着き」に満ちた場所になっていました。その雰囲気を我々のつくる住宅に活かせないか日々思案中です。

カッパドキアの電気工事

imageb4憧れの住宅を見学できて、悦に入っていましたが、「どうやって洞窟に電気を引いているか」ということを現地の人に聞いてみました。聞くまでは気づかなかったのですが、壁を凝視して見ると掘削時の彫り痕にあわせて造形されたモルタルで配線を見事に隠蔽してありました。この処理もトルコ政府に指示されたものらしく、その技術の素晴らしさ、歴史遺産を使用しながらも守りぬこうとする国の姿勢に感銘を受けました。

住宅以外の世界的に有名な建築、遺跡などの数多くの世界遺産もトルコには点在しており、それら全て一見の価値のあるものです。それらの体験記はまた別の機会に。

営業・設計担当 田中賢二