自然とモダンに暮らす家。「き」なりの家

絶妙な空間設計に叶えられた
開放感が包みこむ豊かな暮らし

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見晴らしの家

設計:田中賢二/施工:藤原幹也/大工:吉房泰彦

思わぬ提案が実現した、理想を超えた家づくり

敷地を見て、外観を見ても、この家の間取りを思い浮かべられる人はまずいないだろう。
もともとご主人の実家があったというこの土地は、築20年以上と思しき古い民家が数多く残る住宅地の一角にある。
坪数にしておよそ40坪ほどにはなるだろうが、周囲と見比べてみても決して目立つような広さではない。祖父との同居を決めた母からその土地を譲り受けることになったとき、一番初めに考えたのは「どうしたら広く明るく、居心地のいい家ができるだろうか」ということだった。

夫婦ともども20代での家づくり。憧れこそ大きいが、経験や知識はもちろんまったく持ち合わせない。
大手住宅メーカーを尋ね、地元工務店を検討した末にたどり着いた「『き』なりの家」の担当者が提案してくれたのは、スキップフロアを生かした空間だった。

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庭に開く、光を入れる、窓それぞれに最適にデザインして落ち着きと開放感を両立

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1階のメインスペースはもちろん、キッチンとダイニング、リビングが連なったLDK。バスルームやトイレなどの水廻りやメインクローゼットは、家事導線に考慮して、キッチンすぐ横にまとめられた。
ここに、季節の草木が彩る庭と玄関を配せば、本来なら空間はすべて使い切られてしまうはず。
けれど担当者は、キッチンの正面に短い階段を配し、玄関上までの10畳分ほどをスキップフロアとして提案。折角の吹き抜けを生かし切るため、LDKに面した東側は壁でふさがず、アイアン格子で緩やかなつながりを持たせた。

 
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木の質感にこだわった玄関

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縁側と軒が心地よい南面の庭

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階段で微妙につながる空間

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洗面台も大きく、ゆったりと

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家族を緩やかにつなぎ合うスキップフロアの巧妙

思わぬ提案で生まれた一部屋は、家族並んで座れる大きなソファを置いてもまだ十分にゆとりがあり、セカンドリビングと呼ぶにはもったいないほどの心地よさ。
吹き抜けの開放感も、むしろより際立つように感じられる。

「セカンドリビングと言えば確かにそうですが、1階とこのスキップフロアには段差があるという以外明確な仕切りがないので、感覚としては同じ空間。
こちら側にいると1階全体が見渡せる分、より開放的な印象はあるかもしれませんけどね。
どちらにいることが多いというのもなく、子どもたちが下でテレビを見ている間に私は上で音楽を聴いていたり、家族そろってここで映画を観たり、その時その時の気分で好きに過ごしているという感じです。
家族が別々のことをしていても同じ空間をどこかで緩やかに共有し合える、その安心感が心地いいですね」。

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数段の小上がりの上にはくつろぎの為の中二階のリビング

 

 
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開放的なキッチン周りも落ち着きある木の質感に包まれる

スキップフロアに設計したことで、さらなる副産物も生まれた。玄関からLDKまでの一角に、奥さま専用の書斎ができたのだ。
玄関とキッチンの間となれば、仕事と家事と子育てと、慌ただしい毎日を送る奥さまにとってはこの上ない“好立地”。

「自分専用のスペースなんて、考えたこともなかった」とどこか申し訳なさそうな奥さまだが、設えられたカウンターには「もう間もなく真新しいミシンが届く予定」と、うれしそうに教えてくれた。

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視線を避けつつ視界を広げる巧みな開口設計

スペースの半分以上を吹き抜けに譲った2階は、中央に主寝室、その東手に子ども部屋が並んでいる。寝室の西壁にはさらに小さな開口があり、覗いてみると奥には小さな小さな小空間も設けられていた。
寝室との間に扉はなく、小上がりの上部に開いた入り口も“入る”というより“潜る”と言った方がしっくりくるようなサイズ感。さぞかし窮屈なのではといぶかりつつ頭を下げて中に入ると、南面の壁がすっかり抜けて、スキップフロアの天空の先の南窓が清々しい風景を映し出していた。

開口の内側に設けられた幅1mほどの短いカウンターの上には、表紙面を上にして伏せられた読みかけの本が一冊。掘りごたつ式になったこの場所に腰を降ろし、コーヒーを片手に愛読書を読みふける――。活字好きには何ともたまらない至福の光景が、頭の中に浮かんできた。それをそのまま伝えると、ご主人は「まさに」といって微笑んだ。

「日本人ですからね、ときどきは畳敷きの和室にごろんと寝転んでくつろぎたいじゃないですか。といっても和室の客間を作ってもほとんど使う機会はないし、リビングも狭くなる。それなら書斎替わりに小さな畳部屋を作ってもらおうと、お願いしたんですよ」
言われてみれば、収納スペース程度かと思われたこの部屋には畳2畳に掘りごたつ分のスペースがある。50㎝ほど小上がりになっているため立位ですごすのは苦しいが、大人一人寝転ぶくらいなら十分に広い。掘りごたつに足を垂らしたままで仰向けになれば、両手を伸ばしても壁に手を突くことはないだろう。

寝室の開口を見つけるまでこの部屋の存在に気付かなかったのは、南の開口がちょうど正面に平行してのびる階段上部の壁面に当たり、LDKや階段からの視線がうまい具合に割けられていたから。けれど一方で、内側から見える景色はおそらくどの部屋よりも開放的で、西側を向くと、小窓の先には青い空と美しい田園風景がのびやかに広がっていた。

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外の景色や家中を見渡せながらも、落ち着きのあるご主人の書斎

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高低差も楽しめる視界

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壁と天井があいまいになる木のデザイン

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奥様の書斎もたっぷりの収納をデザイン

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こだわりの書斎から広がる景色を見晴らす

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