自然とモダンに暮らす家。「き」なりの家

敷地の独自性を活かし
唯一無二の空間を楽しむ

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山を背にする家

設計:杉本 洋・石田 博/施工:藤原 幹也/大工:徳永幸男

伝統的な和と、北欧モダンの融合

車通りから脇へ入ると嘘のように喧騒がやみ、のどかな里の風景へと一転する。
山裾の小さな集落の中、細い坂道を登った先が、一家の住まいだ。

ご主人の実家は代々繊維業を営んでおり、敷地はその会社の隣。敷地内に両親の住む母屋があり、隣接していた離れを倒しての新築である。
母屋は伝統的な日本家屋。古いながらも、家も庭も美しく手入れされ、深い趣をたたえている。
「ですから新居は、この母屋の外観と調和するものであることが、なにより大事と考えました」とご主人。

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柔らかな光を与える和室は母屋の中庭へと繋がっている

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一方奥様は北欧の建築やインテリアに関心が高く、例えばかつてフィンランドまで足を運んで見たという、建築家アルヴァ・アアルトの自邸などが、憧れのイメージだったそうだ。
また日本のクラフト品も好きで、以前から焼き物やガラスの器、織物など、気に入ったものを少しずつ買い集めていた。そういった趣向はご主人にとってももちろん心地良いものであり、目指す方向はご夫婦の間でおのずから絞られていった。

木や漆喰といった自然の素材を使い、住むほどに味わいの出るもの。母屋と調和しながらも、和に行き過ぎず、モダンな感覚も感じさせるもの。

「きなりの家」は、ふたりの描く住まいの姿にぴったりと合致していたそうだ。

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階段下のワークスペース

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緑が覗く、明るい洗面

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デスクとリビングを繋ぐ開口

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大きな窓で玄関も明るく

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崖際のロケーションが生み出す無二の魅力

この家を語る上で欠かせないのが、すぐ北側に迫る高い崖。
建築基準ぎりぎりだったというこの敷地条件を、設計士も施主もむしろ希少な魅力と捉えて活かしたことで、住まいに無二の個性が生まれた。

リビングから吹き抜け上を見上げると、2階の窓いっぱいに揺れる緑の葉。崖を覆い尽くす草木が窓に触れそうなほどに迫り、まるで巨大な絵画のように空間を彩る。
さらにこのロケーションの魅力を楽しめるのが、2階吹き抜けに架けられた渡り廊下。北の窓からは間近に緑を眺められ、南の窓からは遠くの家並みを見下ろせる。

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ゆるやかに繋がるLDKとお気に入りの薪ストーブ

 

1階崖側はやはり入念な安全対策を施すため、窓を設けず、強固な基礎を立ち上げて壁と一体化させている。吹き抜けがあり、背面は耐火壁というこの一角はまさに薪ストーブに絶好の空間といえるが、当初ご夫婦は、メンテナンスの不安などから設置は諦めていたという。
だが、工事がかなり進んだ時点で現場監督と棟梁から「やっぱり薪ストーブ入れませんか?今なら間に合いますよ!」との一言。絶妙なタイミングでの「誘惑」に、いっぺんに心が動いたそうだ。
ストーブでは子どもたちとピザを焼いたり、煮込み料理をしたり。実家のお父様が喜んで薪割り係を務めてくれるといい、「入れてよかったと思うことばかり。お二人に感謝です」とご夫婦は笑顔で語る。

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キッチンは造作の収納を前面にも配し、たっぷりと確保

プランは使い勝手のよい1階にLDKのほか畳コーナー、書斎といった暮らしの空間を充実させ、代わりにサニタリーを2階にまとめた。
買い物~炊事、入浴~洗濯といった生活動作の流れを綿密にシュミレーションし、効率的な動線と収納計画がなされている。
北欧家具のようなぬくもりをもつ造作キッチンには、奥様が前々から憧れていたアアルトの照明「ゴールデンベル」を吊るして。アクセントとなるアイテムのあしらい方に、住む人のセンスが伺える。

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風景にそっと溶け込むデザイン

趣深い日本家屋と、緑豊かな山とにはさまれた敷地。この場所に、どんなかたちをもってくるのがふさわしいか・・・外観デザインは、プランの中でもとりわけ繊細な配慮をもって造られた。
地元・倉敷らしさを感じさせる、白壁と瓦屋根の家。正面には伝統的な倉敷格子を設え、美しい意匠性とともに、内からの眺望を妨げず外からの視線を遮るという機能性を持たせた。
縁側の先には母屋の古い萩垣とおそろいの垣根を築き、開放的なリビングをほどよく目隠しする。
特に設計士が注意を払ったのは、圧迫感の軽減。袖壁を設けたり、一部をへこませたりすることで建物のボリュームを分節し、重く見えないよう工夫している。

住まいはまるで昔からあったかのように、風景にしっくりとなじむ。それでいて、先祖からの土地に新しい風を吹き込むような、若い世代らしさも感じさせるものとなった。

室内にいれば、ふと視線を移すたびに、外の緑が目に入る。
「例えば洗面コーナーの上の窓。うがいをしようと上を見た途端に緑が見えて、いつもハッとさせられるんです」・・・ご夫婦は生活を始めてみて、あらゆる窓が絶妙な位置に設けられていることに気づき、一層の感銘を受けたという。
「朝、鳥の囀る声で目覚めるのが、とても幸せです」と奥様。
「静かで、自然がいっぱいで、毎日山の別荘にいるみたい。贅沢な暮らしですね」。

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格子のある2階から母屋を臨む

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左手に山、右手に空を見る

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将来間仕切りの子供部屋

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使い勝手の良い洗面脱衣所

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意匠と機能を備えた倉敷格子

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